大多喜とメキシコ友好記念碑
大多喜とメキシコ友好記念碑
令和元年10月30日完成 場所:南廓踏切付近 大多喜町大多喜188-1
テーマ
大多喜町とメキシコの交流のきっかけとなったドン・ロドリゴを乗せたガレオン船の遭難や、その後メキシコに帰国するため建造された船をテーマにメキシコ在住日本人彫刻家の矢作隆一氏とメキシコ人彫刻家のホルヘ・イスマエル氏の共同制作及びアーティストインレジデンスによる石の彫刻作品。
船の形をした石(白御影石)は、ベンチとなっておりますので座ることができます。その上の黒い石はメキシコから運んできた黒曜石(こくようせき)です。
《注意》黒い石は強い日差しにより高温になる可能性があります。
やや大きな縦のひび割れが生じているのを確認しました。
割れてしまう恐れがありますので、立入禁止とさせていただいております。
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大きい船形の石とその上の黒い石(黒曜石)との間には、大多喜町の思いとして、「友好の絆」と彫刻しました。 |
~大多喜とメキシコ友好物語~
慶長14年(1609年)旧暦の9月初め、スペイン領フィリピン諸島の臨時総督ドン・ロドリゴ一行を乗せたサン・フランシスコ号が日本近海を航行中、嵐により遭難し、乗員約350人中300人ほどが、大多喜藩領であった現御宿町岩和田の海岸に漂着しました。難破船を知った村民たちは、「キモノ」や食料品を与えるなど、ロドリゴ一行を手厚くもてなしました。
時の大多喜城主本多忠朝は、一行を大多喜城に招き、歓待しました。その後、江戸へ送りとどけ将軍徳川秀忠、さらに、駿府(現静岡市)では徳川家康にも謁見しています。翌1610年には家康の計らいによってウイリアム・アダムス(三浦按針)に建造させた新しい船で、一行はメキシコに無事帰還しました。
これら、旧大多喜藩領での出来事が機縁となって、昭和50年9月には、大多喜町とドン・ロドリゴ総督の馴れ初めを再現した武者行列を中心に記念すべき、第1回大多喜お城まつりが開催されました。
また、昭和53年8月には、メキシコ合衆国を訪問し、クエルナバカ市と姉妹都市協定を締結しました。同年11月には、メキシコのロペス大統領が公式に大多喜町を訪問された際の記念として、三の丸から総南博物館(現県立中央博物館大多喜城分館)までの道路を「メキシコ通り」と命名し、メキシコ大統領友好の塔が建造されました。しかし、その塔は老朽化等もあり平成25年に撤去のやむなきに至りました。
そのため、ここに新たな記念碑として、船のモチーフを、そして、その上の黒い玉石はメキシコの魂を、中央のモニュメントは、太陽と海を表し、大多喜町とメキシコ合衆国の友好の継承と象徴となる記念碑を建設しました。スペイン語訳 Otaki y México, historia de amistad
制作者のコメント
「メキシコと日本 真の人間的な繋がりを教えてくれるモニュメント」京都場 仲野泰生
410年前、ここ大多喜町の人々は、フィリピンからメキシコに向かう途上で難破した船の乗組員を、命がけで助けました。メキシコと日本のアーティストがこの大多喜町の人々の思いに感動し、この石のモニュメントは生まれました。この二人のアーティストは過去の逸話や記憶を、現実のものとして具現化したのです。この友好のモニュメントは私たちの世代だけでなく、未来の世代に向けた大多喜町の人々の思いを発信する一つの装置になって行くことでしょう。
「歴史 – 心」彫刻家 ホルヘ・イスマエル・ロドリゲス
黒曜石と白御影石が響き合うこのモニュメントの中の白く薄っすらと光沢のある船は気高い日本人であるとも言えます。この船は芝の上を航行し、メキシコ人の冒険的な魂を表す黒曜石の玉を大事に運びながら航海を続けます。また黒曜石に写り込む世界は、我々の住む小さな地球とも言えるのです。(この船に座り、人々は「友」 と一緒に黒曜石の中の世界を旅することができるでしょう。)
文化の違いを超えた両アーティストの友情を通して、400年以上前の偶然の出会いの本質を、この作品に見て取ることができるでしょう。これからも末永く我々の魂に両国の友好の絆として愛されていくことと思います。
「心の記憶」彫刻家 矢作隆一
日本とメキシコの絆の生まれたこの地に相応しく、異なる文化や人種を超えた記念碑であるよう、一人の作家による作品ではなく、メキシコ人彫刻家ホルヘ・イスマエルと日本人彫刻家矢作隆一による共同制作となりました。また町民の方々にも愛されるモニュメントであるために、たくさんの町の人に直接、メキシコから運んだ黒曜石に触れてもらいました。こうして友好の絆の玉石を載せた船は未来へと航行をはじめるのです。これからも多くの人と触れ合い、大多喜町の情景を写し込みながら航海は続いて行くことでしょう。
時の流れの中で無意識に受け継がれてきた何か、そしてこれから何を継承して行くのか。このモニュメントを通して、考え学んでいく機会を作ることができれば幸いです。